天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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造・加工技術、およびそれが生み出す事象・事物とは相互に深く結び付いており、文化を語るには技術的視点を、技術を語るには文化的視点を持つことが必要であり、また、持つべきであります。特に、技術の未来を語るには、そのような視点が不可欠であると思われます。例えば、新技術や新製品の開発・発展の可能性について議論する場合にも、技術の未来を語ると同時に、社会や文化の未来をも語るべきであり、目指すべき人間社会や生活のあり方について考察し、広い視野を得て、課題を追求していく取り組みが、より豊かな成果に結び付きます。このような意味から、産業文化の育成は、技術そのものの育成と同意義であり、今後、その育成には格別の配慮が必要であろうと思われます。産業・技術の現状を展望しますと、他と同様、金属加工もまた新たな転換点に直面していることが分かります。コンピュータ技術ならびに情報技術の目覚ましい進化と、それらを踏まえての加工設備・機械の知能化、複合機能化、製品の多様化・要求機能の複雑化などに加えて、世界規模の生産能力の急激な拡大と市場構造のグローバル化、新興工業国の目覚ましい台頭など、大小無数の変化・変動が日々押し寄せています、加えてICTが先導する高度情報化産業社会への転換が急速に進んでおり、これと軌を一にして、第4次産業革命の到来も叫ばれています。このような状況下にあって、金属加工はいかに対処すべきか、難しい判断を迫られています。天田財団の助成は、将来を見据えた広い視野に立つ適正な選択、研究者の自主創造性の尊重、を基本原則としています。加えて、金属加工が体現する産業振興に貢献すると同時に、産業文化の育成にも重要な役割を果たさんとしています。豊かな産業文化は、豊かな創造性を育み、来るべき高度情報化産業社会の基盤を支える力を生み出すことが期待できます。今後の"モノづくり産業文化"の発展は、そのままわが国の持続的発展に直結すると考えられることから、その推進に全力を傾けることはわれわれの責務であります。天田財団の一層のご支援を心よりお願いし、期待したいと思います。7

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