天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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――わが国の産業および経済の健全な発展に寄与するという観点で、財団は今年度から、産学交流会事業を、年2回程度開催することを計画しました。助成した研究成果を広く産業界の方々に紹介するとともに、懇親会を開催して相互のネットワーク構築を促進することを考えました。2016年7月に九州で第1回の産学交流会を開催、2017年2月には石川県金沢市で第2回を開催しました。こうした交流会も研究成果の普及活動と考えていますが、こうした活動をどのように考えられますか。織田―産学連携の促進は重要なテーマです。私もアマダ在籍中にいろいろな大学と産学共同研究を試みましたが、なかなか成果が出ません。産側に学と連産学の架け橋を目指せは時々刻々と変化しており、技術の陳腐化が進んでいます。その意味で財団は常に定款3条に示されている「もってわが国の産業および経済の健全な発展に寄与することを目的とする」を遵守した活動を展開していくべきだと思います。その意味では30年間で1,400件以上の研究テーマに、20億円余りの助成を行うことができた財団の活動は誇れるものだと思います。 ただ、考えなければならないのは塑性加工分野もレーザ加工分野も研究者の数や研究テーマがサーチレートしてきているということです。これは塑性加工やレーザ加工分野に限らず、工学全体の傾向ですが、研究者の数が減少している状況をもっと深刻に考えなければいけません。日本塑性加工学会の会員数も減少傾向が続いており、工学への回帰という意味合いで人材を育成する必要もあります。財団としては3条の目的にかなう、新たな助成研究分野、研究テーマを積極的に掘り起こしていく必要があると思います。重点研究助成の狙い――織田前理事長が理事長時代に天田財団創立30周年記念事業として、独創的、かつブレークスルーの期待できる研究への助成目的で2015年度から「重点研究開発助成」を行うことが決まりました。テーマは自由でグループで取り組むプログラムA(2,000万円)と、財団が定めた10の課題からテーマを選んで挑戦するプログラムB(1,000万円)とが設けられました。この狙いは何ですか。織田―応募型の財団としては、先生からの研究テーマの応募を待って審査、助成対象を決めるというのが事業になります。それも大切なことですが、これからの塑性加工や、レーザ加工を考えたときに、財団として、こんな研究分野、テーマを研究される先生はいませんか、という情報発信を行う必要があると考えました。定款3条の、「もってわが国の産業および経済の健全な発展に寄与する」手段として、塑性加工やレーザ加工の研究助成があります。助成は手段です。 そこで、重点研究開発助成Bは10項目の課題を核とした研究テーマへの助成とし、この中から1つあるいは複数を選定し、財団がこれらの課題を網羅する研究テーマを設定して、応募していただくことで、財団の存在感を示し、財団からのメッセージ性が強い研究テーマを助成したい、と考えました。 これに対して重点開発研究助成Aは、グループで新しく取り組む研究への助成とし、そのテーマはフリーとしました。グループとは、一機関内での研究室全体、または学部・学科横断的組織で編成するか、あるいは複数の機関に所属する研究者でグループを結成するか、もしくはその複合型でも可とすることで幅広い分野の研究者がコラボして研究し、研究に必要な機材を共同で使うために購入する資金の一部として活用していただくことも可能とする考えもあります。高額な機材導入となるとたかが2,000万円ですが、されど2,000万円です。これまでにはなかったような研究テーマで応募される可能性があると考えました。天田財団はアマダが無配になってもそれまでの蓄積で助成を継続するだけの資金があります。その資金を、わが国の産業および経済の健全な発展に寄与するための研究に役立てていかなければならないと考え、企画しました。48概 説

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