天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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て、財団の設立にご尽力いただくようにお願いしました。 こうした準備が整ったところで1986年に通産省に財団法人天田金属加工機械技術振興財団の設立を申請、1年後の1987年6月に名誉会長が保有されていたアマダの株式を基金に、財団設立が認可されました。設立に際しては名誉会長の持株の他に、アマダグループにはアマダ、園池製作所、アマダメトレックス、ワシノ機械という上場会社が4社ありましたので、4社が応分の寄附を財団に行い、基金の一部としました。1991年に行われた天田機械金属加工技術振興財団(現天田財団)主催のFORM TECH'91(FORM TECH第1回)であいさつをされる天田満明理事(当時)――助成する資金は天田勇名誉会長が寄附したアマダ株式1,000万株の配当金を充当するということのようですが、天田元理事長が理事長に就任された1997年は、1992年のバブル崩壊、1997年のタイバーツ破綻から始まった通貨危機など、マクロ景気が厳しかったと思いますが財団の運営に支障はなかったのでしょうか。天田―確かに景気後退でアマダグループの業績も悪化、2000年にはアマダがアマダメトレックスを吸収合併、園池製作所とアマダワシノが合併してアマダマシニックスとなりました。そして2003年にはアマダとアマダマシニックスが合併することで4社あった上場会社がアマダ1社になりました。こうした経営合理化努力などによってアマダは配当を継続することができたので、助成資金が枯渇することはありませんでした。たしかに配当額が減少して助成資金の原資は少なくなりましたが、助成事業を脅かすほどのものではなく、継続することができました。 2007年からはレーザプロセッシング分野への助成もスタート、2011年には内閣府の所轄で公益財団法人天田財団と一新することもでき、2016年度までの累計助成件数は1,459件、累計助成金額は21億7,000万円になったと聞きます。継続は力なりではありませんが、勇名誉会長の社会に貢献するという志は脈々と受け継がれてきたと思います。継続は力なり――財団も設立30周年を迎えますが、さらに50年、100年を迎えるためにどんな活動を目指すべきだと思われますか。天田―塑性加工分野、レーザプロセッシング分野といっても奥が深い。公募型の財団ですが、財団が「待ち」になってはいけないと思います。もっと足を使ってどんな大学がどんな研究をされているのか、マーケティングすることが必要だと思います。産業界では各領域でのコモディティ化が進む中、新たな価値を生む研究開発が急務となっています。その意味で塑性加工や、レーザ加工技術を広義に捉え、どんな研究分野があるのか、財団自身が助成テーマを探査する必要があると思います。 最近、日本の伝統技術である折紙を基に「折紙工学」という研究分野が生まれています。わが国の先端技術の一つであるロボット工学は、江戸期のからくり技術がその基になると言われています。そういう意味で私は「折紙工学」に期待しています。折紙も塑性加工分野です。そういう発想で新たな分野を発掘していってほしいと思います。 財団は応募を待つのではなく、積極的に研究テーマを発掘するポジティブな活動が求められていくと思います。公募型財団でも助成テーマはマーケティングする43

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