天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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て、作動を続けることを目指している。あいまいさの許容幅は、現状よりもはるかに小さくしなくてはならない。ゆえに、新産業革命の流れに乗って、Smart FactoryやRobot Cell 生産などを志向するには、まず現状分析・現状把握を徹底し、現状技術の特性や挙動を可能な限り正確に把握する、すなわち、深耕を実施しなければならない(図15参照)。同様な意味で、基礎研究が大切である。当該プロセスを支配している原理や、プロセスを構成している事象・事物を律している法則や関係性を正しく把握しない限り、上述の深耕も十分な効果を上げることはできない。製造・加工を成り立たしめている基本物理現象の法則性・関係性を深く理解するほど、応用能力が高まり、創造的な成果を得やすくなる。すなわち、基礎的現象や事物に関する深耕は、創造的発展への王道であることを知らなくてはならない。10.結言:未来を創る研究を!本稿では、急速に進化しつつある情報技術の影響下で、変化を続ける金属加工技術、ひいては、製造技術について、現状を概観すると同時に、予想される近未来の姿や、今後、取り組みが求められる技術課題について、著者の考えを述べた。当面する問題への対応や今後への備えとして、金属加工は、今、何をいかにすればよいのか、という視点からいくつかの提案もした。問題は複雑であり、検討すべき事項は多く、限られた紙面で論じ尽くせなかったが、主たる問題点について、相応の考察を行った。結果をとりまとめると、以下の様になる。(1)製造業や加工技術は、"モノづくり"として発信したことにより、社会から広く受け入れられ、重要な社会基盤であり、社会活力の源泉であり、産業文化の担い手でもあるとして、理解され認知されるようになった。かかる社会的認知を得たことは貴重である。工業技術として社会を支える役割に加えて、産業文化を高める社会機能としても貢献していることを自負することが、今後の発展・進化を促進する大きな力になる。(2)高度情報化産業社会を生き抜くためには、質の高い情報(以下、情報・知識・データを含む)を創出する、獲得する、発信する能力と、獲得した情報を分析し、理解し、加工し、活用する能力の格段の強化が急務である。(3)質の高い技術情報の獲得のために、計測技術の具備・整備が極めて重要である。既存の計測機器に依存するのみでは、情報の優位性は確保できない。計測方法・手段の工夫・考案、機器の試作、等の積極的取り組みが必要である。(4)わが国の将来は、無人化製造加工技術の開発・整備による高度生産力の確保以外にはない。その核となる技術は、人—機械融合技術であり、人—ロボット協働技術である。幸い、わが国には、その実現に要する基盤要素技術はある。また、日本人および日本社会には、それを受け入れる柔軟性がある。挑戦・実践のみが成果をもたらす。(5)人間—機械融合型技術の重要な基本形は、人—ロボット協働系である。特に、人—双腕ロボッ図15. Smart Factory/Unmanned Productionの枠組SystemIntegrationOpenPlatformFA, CNC,RobotLegacyInterfaceK.I.D.IntegrationAppli-SoftIntegrationIntelligentMachineInternetEthernetUnmannedProductionAISmart Factory図14. 知識・技術の深耕が創造性を生み育てるLearning,UnderstandingAnalysis, Synthesis Narrow view LimitedapplicationCreative OutputAccumulation of KnowledgeSimple Learning Just KnowingCopy, ImitationCollect Knowledge, Data InformationJust CollectingDeep/Learning UnderstandingFusionReform知識・情報・データ(K.I.D.)の十分な収集・蓄積と 徹底した学習による深い理解が創造性を生む28特別寄稿

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