天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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内各ステップの状況を、より細かく正確に把握し、その結果に基づく適正な制御を実行し、より安全・安定かつ効率的な製造・加工を実現しようとする考え方である。製造現場から、従来より格段に質の高い情報やデータの取得を実現し、それらの分析を通して間違いの無い判断や指示をすることは、無人化の大前提である。かつて、この方向へ向けて大幅に技術集約を進め、大きな成果を挙げてきた製造・加工プロセスの代表的事例として、鉄鋼コールドストリップの連続製造ラインがある。熱延鋼板を素材として、酸洗工程、冷間圧延工程、焼鈍工程を直結連続化した長大なラインに送り込み、高品質な冷延鋼板を高速・高能率に大量生産するシステムであり、酸洗・圧延・焼鈍という本質的に異なる3種類の加工技術を結び付け、それらの加工設備および加工機を同調的に制御しつつ高速運転して、目的を達成している。9.新産業革命を目指す?金属加工新産業革命を担う基盤要素技術 現在、Industry-4.0の考え方を基盤として、新産業革命の到来が叫ばれている。そこでは、対象製品図13.技術融合のあり方Analysis of K.I.D.Synthesis of K.I.D.Fusion of K.I.D.Innovative DevelopmentFusion of Principle/MethodFusion of Process /DeviceSustainable  Advance手順で分析し、その結果に基づいて、設定条件を調整する、などの能力についても、人間の比ではない極めて高い能力を有している。しかし、何故そのような作業を行うのか、その作業がどのような効果や成果に結びつくのか、のごとき問いに対し、自ら考えて答えることはできない。製造現場においては、ささいな変化の兆しとその意味をどのように捉えるかなど、連想や直感による判断や対処が重要な意味を持つ局面が多々ある。このような問題・課題については、AIよりも人間が確実に優れている。以上の事実から言えることは、無人化技術の望ましい形は、人間とAIとの協働の上に成り立つ、という当たり前の結論である。今後、AIの進化により、上記の作業をすべてAIに取り込むことが可能になるかもしれないが、おそらく、それは最善の策ではない。最善の姿は、AIと人間とが相互補完的に、AIの機能・能力と人間の経験・知恵・直感などとを融合させつつ問題に対処できる融合型知的システム、または、融合型知的技術構造を追求する道であろう。無人化工場の基盤をなす人―機械融合型技術の基本目的は、人間と機械、人間とロボットの協働を支える技術体系の整備でもある。これは、単なる共同作業を越えて、限りなく人間と調和し補完し合うことができる機械技術・ロボット技術を、ハード・ソフト両面から整備することを意味する。前節で、双腕ロボットの重要性を述べたが、そこで論じたのは、主としてロボットの機械的機能にかかわる問題、すなわち、ハード面での課題であった。ここでいう人間との融合を目指す機械技術・ロボット技術とは、ソフト面での融合をも達成できるものを意味する。人間との融合を目指す以上、ハード・ソフト両面で人間と類似する機能を持つことが、相互理解あるいは融合的協働を実現する際に、重要な要件となる。無人化が目指すものところで、無人化の推進とは、人間の関与を全面的に排除することを意味しない。既述のように、AIは、既存の膨大な知識・データを保持または参照し、それらの中から指示された事項を探し出す、あるいは、定められた算術的処理を加える、などの作業について極めて高い能力を有し、人間は遠く及ばない。また、長時間に渡って設備機械やプロセスの監視を行ったり、時々刻々入ってくる多元データを一定の"Fusion" is a key to Future!Creative Evolution 26特別寄稿

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