天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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ことができるロボットを目指すべきことを意味し、より広範な現場へのロボットの導入を促進していく上で、極めて重要な要件である。(3)、(4)の課題は、高品質で信頼性の高いロボットをいかに設計・製作するか、どのようにして人間とロボットの協調度を高めるか、という問題である。前者については、「機能・品質に優れた機器を安くつくる」という日本企業が最も得意とする技術課題である。後者については、日本の現場が一貫して維持してきた協調的精神、変化にいかようにも対応する柔軟性、率先して実践する工夫・改善、などにより、望ましい協調体制やライン構成が見いだされ得ると確信できる。特に、前者(1)の課題に関連する有効な方策として、以下に述べる双腕ロボットの活用を検討すべきである。双腕ロボットの活用双腕ロボットを推奨する理由は、人間との協働性を高める上で有効であると考えられるからである。人間は、ほぼすべての作業を両手・両腕を用いて行う。仮に片手・片腕で作業する場合も、両手・両腕で行う動作を基準として無意識に片手・片腕を選んでいる。その逆、すなわち、片手・片腕の動作だけで両手・両腕の動作を代行することはない。人間は、無意識のうちに、目的達成のために両手・両腕の最善の動作を構成することができる。また、相手に、例えばロボットに、必要な動作を教える場合も、無意識のうちに自分で行う場合を基準として、両手・両腕の動きを分解し再構成して教えることができる。しかも、そのような動作の分解や再構成を、あらためて試行錯誤を重ねて考え直す必要もなく、自然にかつ瞬時に実行できる。さらに、2人で組んで共同作業を行う場合でも、相手の動作を無意識のうちに予測し、それに同調する動作をすることもできる。すなわち、人間と協働するロボットは、できるだけ人間または人間の手・腕(場合によって体躯・脚など)に同調および追従できる機能・自由度を有し、類似する動作ができることが望ましい。ロボットが構造・形態や機能・動作において人間と類似しているほど、人間は相手ロボットと協調動作をしやすくなる。ただし、この類似に関する要求は、現在開発が進んでいるヒューマノイドやアンドロイドとは異なり、ロボットの形や外見とは関係なく、あくまで動作機能に関するものである (図12参照)。製造・加工の現場において、作業者が、ロボットにいかなる動作をどう教えればよいのか、を直ちに理解し、実行できれば、人間―ロボットの協働・協調は容易に実現する。ロボットはどこでも誰にでも使うことができるものでなければならない。結論的に言えば、双腕ロボットは、人間と協調・協働させることが本質的に容易となる機能特性を有している。その上で、以下の機能を具備することが望まれる。すなわち、(1)人間と同等の動作の自由度があり、直接、手・腕をとって必要な動作を教えることができる、(2)人間が手をとって教えた動作を忠実に・精度よく再現することができる、(3)さらに進んで、人間の動作を見て、そのまままねすることができる、(これは今後の興味深い技術課題である)、(4)自らの動作について学習能力がある、(5)視覚・聴覚を有し、文字・音声を認識できる、などである。既述のように、できるだけ多くの仕事をロボットに代行させるためには、ロボットの教育を容易に行い得ることが重要である。AIは救世主たり得るか8.無人化技術が支える高度生産大国無人化生産あるいは無人化工場の実現は、わが国が、高度工業国として先進技術力を維持し、経済大国としての力を持ち続け、国際社会で先導的な立場を確保していくために、必須の技術課題であり、わ図12. 双腕ロボットイメージ図誰でもどこでも調和的協働実現▶手・腕をとっての直接ティーチング▶数値データによる動作制御双腕ロボット▶人の動作解析▶数値データ化作業者人間と同じ形態人間と同じ自由度Teaching/Collabo.容易度・自由度向上24特別寄稿

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