天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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図10. 経営側から見た今後の課題 (by JMA Report)▶Long-Range View Point▶Quality-Oriented Spirit▶On-Site Checking & Judging▶Self-Development / Responsibility▶Common Hold and Use of K. I. D.▶Good Relation between Maker and User▶Life-Time Employment▶Continuous Education / TrainingPrior Subjects for Future ManagementK=KnowledgeI=InformationD=Data現場が抱える技術課題人口減少と技術革新力一般的に言えば、製造・加工技術は価値を創り出す技術である。その製品は、固有の価値を保持し、時と場所により、その評価が変化することがあっても、固有の価値が失われることはない。一方、情報技術は、価値を探索し、見つけ出し、認知させるための技術である。当該事物・事象について、新たな価値を見いだし、あるいは認知させて、付加価値を発生せしめ、販売促進や収益向上に貢献する技術である。そのような価値を先見・発見できる能力のゆえに、利得を独占し、製品や市場を支配することも可能になる。Big-D.I.A.産業社会においては、この情報分析・活用能力の差が、市場の勝敗を分ける決定的な要因となり得る。6.金属加工の近未来 当面する課題金属加工分野で今後取り組みが必要と考えられている技術課題を列記して(図9)に示す。また、経営面から見た課題を(図10)に示す。内容は多様であり、現在、話題を集めているIoT、 Big-Data、その他IT関連の課題も多い。一方、後述する労働人口の減少がもたらす問題を見据えて、さらなる自動化、省人化、無人化、を目指している課題もある。金属加工の立場から見れば、いずれも重要課題であるが、以下、労働人口減少への対応と言う視点から考えてみる。近未来において、わが国の金属加工業ひいては製造業が当面する最大の問題は、労働人口の急激な減少に伴う生産力および技術革新力の低下である。この問題は、モノづくり立国を前提としてきたわが国にとっては、国力の衰退と同義であり、看過すれば極めて深刻な結果を招く。1994年に成人式を迎えた若者は約205万人、2017年の成人は約120万人である。確実に訪れる製造業人口の減少がもたらす負の影響をどのようにして補い、過去半世紀、先人が営々と築き上げてきたわが国製造業の経済的・技術的優位性を保持し続けるか、という差し迫った課題に、われわれは全力挙げて取り組まなければならない。言うまでもなく、これら生産力・技術革新力の低下防止は、技術的な方策をもって対処する他はなく、社会制度や教育制度の変革によって解決できる問題ではない。まして、安易な労働移民の導入などは、極め付きの愚論であり、国家100年の計を誤らせる無責任な考えである。その弊害の深刻さは、近年の西欧の混乱事例からも明らかである。一国の人口の増減が、その国力の増減に直結するという考え方は、第1次産業革命以降の近代国家発展の過程で問題視されるようになり、広く議論されてきた。確かに、過去2世紀半余りの歴史を振り返ってみれば、先進各国において、人口の増大が、生産力の増大、経済力・科学技術力の拡大をもたらし、ひいては軍事力の強化を可能とし、いわゆる西欧列強国が、それらの力を背景に、世界経営または図9. 目下、製造現場が求めている技術▶自動化の拡大から無人化へ到達する力・方策▶破損しない、破損前に知らせる、破損してもすぐ直る 加工工具、加工機械、ライン、工場▶止まらない工場、ZDT (Zero Down Time) Mfg▶IoTによるデータ収集、AIによる学習・解析▶リアルタイム監視手段、多機能情報Net-Work▶現場スキルのデジタル化、加工セルへの伝承▶データ分析・解析力、Deep Learning力、▶知能化 ― 工場・プロセス・ライン・加工機・治工具技術課題21

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