天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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発刊に寄せて1987年(昭和62年)、現アマダホールディングスの創業者、天田勇の私有資産の寄附を基本財産にアマダグループ各社からの出捐によって、金属等の塑性加工分野における機械・加工システム技術に関する研究助成、ならびにその普及啓発事業を通じて、わが国の産業および経済の発展に寄与することを目的とした財団法人天田金属加工機械技術振興財団が設立されました。2007年(平成19年)、研究開発助成の新たな取り組みとして、レーザプロセッシング分野を助成対象に加えました。そして、さらなる社会貢献を目指し、内閣府に移行認定申請を行い2011年(平成23年)、公益認定を受け、公益財団法人天田財団になりました。2016年度(平成28年度)までの累計助成金総額は21億7,400万円、累計助成件数は1,459件、助成先も124大学、41高等専門学校、30研究機関、17学会と多岐にわたっています。30年という長い期間にわたり、天田財団が研究助成という公益事業を継続できたのは、基本財産である、天田勇が寄附したアマダの株式が毎年もたらすアマダホールディングスの安定した株式配当のおかげであるのはもちろんですが、内閣府ならびに経済産業省、日本塑性加工学会をはじめとした各学協会、財団の運営にご尽力いただいた歴代理事長および役員の皆さまのご努力、ご支援、ご尽力の賜物であり、あらためて厚く御礼申し上げます。さて、ご承知の通り、世界の産業界はグローバル大競争時代に入っております。近年、様々なパラダイムシフトが起き「モノづくり」を取り巻く環境は激変し、「第4次産業革命」とも言うべき「大変革時代」を迎えようとしています。情報処理能力の向上による、IoT・ビッグデータの応用・AI等の融合によってものは皆、そして人は皆、つながる時代が目前に迫っています。世界的なイノベーションの波は、国境を越えて様々な連携、競争、ビジネスチャンスを生み出しています。その一方、懸念事項もあります。イギリスの科学雑誌「ネイチャー」によると、世界のハイレベルな科学雑誌に占める日本の研究論文の割合がこの5年間で相対的に下がり、「日本の科学研究が失速し、科学界のエリートとしての地位が脅かされている」と伝えています。また、オランダの出版社が集計した結果、特に日本が得意としている「材料科学」や「工学」の分野では、論文の数が10%以上減っているということです。従いまして、わが国は若い研究者を育成し、彼らが長期間研究に取り組めるよう資金を含めた環境整備の再構築が急務であることは論を俟ちません。公益法人の使命は、言うまでもなく、より多くの人々の利益に資する活動を行うことであります。わが国が持続的な発展を実現し、これからも世界で主導的な役割を果たすためには科学技術のイノベーションによる課題解決が急務であると強く感じております。日本政府は、人類がこれまで歩んできた「狩猟」「農耕」「工業」「情報」に次ぐ"第5"の新たな社会(Society)をイ岡本 満夫公益財団法人 天田財団 代表理事理事長これまでの関係者ご一同様の尽力にお礼を申し上げつつ、これからもより充実した公益活動を志します2序 文

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