天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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高度情報化産業が求めるもの情報の流れは、われわれに何をもたらすのか、様々な効果が論じられ期待もされているが、未だ不明な点も多い(図6参照)。たしてそれは可能であろうか? 激しい競争を続けている組織・企業・個人の間での情報の公開・共有は、通常、非常に難しく、基本的に不可能である。理想的なIoTが実現すればするほど、参加者間の情報基盤・技術基盤はフラット化し、その間の競争優位性を確保することは難しくなる。結果、水面下での情報の秘匿が始まり、IoTの根本が崩壊していく。すなわち、IoTの構築も維持も理想論だけでは済まない。他方、限られた範囲のクローズドなネットワークは、果たしてIoTが目指す効果を獲得できるのか否か疑問である。実は、クローズドなネットワークは、既に、無数の企業内・企業間で稼働しており、その特性・効果は十分理解され、今後の展開や可能性も明らかになっている。すなわち、IoTは、われわれの対応次第で、いずれにもなる可能性があり、IoTを志向するすべての組織・企業・その構成員は、実現の可能性、可能な形態、期待し得る効果と起こり得るリスクを明確に認識しておく必要がある。Big-D.I.A.化を目指す動きを、産業・社会の持続的高度化の原動力へと転化していくためには、当該または関係する企業・組織・構成員は、以下の2要件、すなわち、(1)情報創成発信機能の拡大、(2)情報分析活用能力の強化、を満たす必要がある。実際、Big-D.I.A.化への参加・協働・貢献等にかかわるすべての問題・課題は、これら機能・能力の拡大・強化から始まると言える(図7参照)。何故ならば、Big-D.I.A.化の根幹は、質の高い情図6. IoT/AI時代をどう捉えるか? IoT/AIによる情報革命は、社会・産業のあらゆる分野・事象・設備・機器などから収集した知識・情報・データを活用して、最適な生産体系・技術を構築し、併せて、人間の能力と可能性を高め、社会の持続的向上の実現を目指す運動であり、方法論である。学習・分析体系・創造伝達・共有補完・連成活用・協働創成・革新収集・蓄積加工・保存IoT/AIデータ情報知識コンピュータデータ情報知識コンピュータ図7. 高度情報化産業時代の"モノづくり"ICT WorldMeasuringInspectionAI分析予測解析総合Mfg加工・処理制御・監視Design製品・部品機械・工具BIG DATAKID BASENet-WorkNet-WorkGlobal MonitoringRemote SensingSmart ControlRobotic Cell LineSmart Factory& MachinesCADCADPDMCIMさらに拡大して、金属加工にかかわる複数の企業や関連分野を結びつける情報ネットワークの構築も議論されている。その場合、われわれは、当該金属加工に関係するすべての事象や事物について知ることができ、かつ、それら知見や知識の共有を通して、より広範かつ永続的な企業・産業・社会の繁栄を勝ち取ることができる、とも言われているが、本当だろうか? それとも逆に、産業・社会とそこに生きるわれわれのすべてを、一部の人間あるいは組織に握られ、彼ら(Big-Brother)の支配を受ける結果になるのだろうか? 既に拡大を続けている巨大な情報企業や政府ぐるみで暗躍している情報組織の漏れ来る実態をみていると、そのような恐れなしとは言えない。問題は大きく複雑であるが、ここでは、IoTの形態とそれがもたらす影響について考えてみる。広く言われているように、IoTにより関連する機械・機器・事象・事物をネットワークで結び付けるとしても、それは関係者や希望者が自由に参加できるオープンなネットワークであるのか、限られた組織・構成員によるクローズドなネットワークを意味するのか、内容には大きな相違がある。可能な限り広範かつオープンでなければ、IoTの本義に反するが、果ネットワークネットワーク19

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