天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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固体レーザのルネサンス(1980年代後半~)フォトン計測・加工技術の研究開発(1997〈平成9〉年)次世代素材等レーザ加工技術開発プロジェクト(2010〈平成22〉年) ランプ励起 Nd:YAGレーザは、安定性やビーム品質などの特性から、加工用としてはガスレーザより劣っていると見なされていた。 しかし、1980年代後半より小型LD(半導体レーザ)の高出力化・長寿命化が実現され、世界的にLD励起によるNd固体レーザの研究開発が活性化した。このことは「固体レーザのルネサンス」と称され、以降、高出力のLD励起Nd固体レーザが多く開発されることとなる。 日本においては、1987年から1989年にかけて、財団法人光産業技術振興協会による委託開発プロジェクト「LD励起小型高出力固体レーザの開発」が日本電気、ソニーの受託により実施され、成果として3.5W(単一モード)/5.4W(多重モード)の固体レーザが開発されている。 1997年度から2001年度にかけて、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の科学技術研究開発制度による国家プロジェクトとして「フォトン計測・加工技術」の研究開発が実施された(研究開発費総額約72億円)。 プロジェクトの目的は、フォトン(光子)による革新的な計測技術・加工技術の実現であり、レーザ分野においては、高信頼度のレーザ溶接技術、高エネルギー密度レーザによる超微粒子作製、LD励起高出力・高効率・高集光固体レーザ発振技術の開発(高出力完全固体化レーザ技術、高集光完全固体化レーザ技術など)が目標とされた。 同プロジェクトの成果として、次のレーザ技術(機器)が挙げられる。・2kWレーザ(日本電気、2000年)・2.5kWレーザ(三菱電機、2000年)・4.5kWレーザ(三菱電機、2006年)・1kWファイバーレーザ(電気通信大学、HOYA、浜松ホトニクス、2002年)・1.4kW Nd:YAGセラミックレーザ(セラミックレーザは世界初。電気通信大学、神島化学、2004年) 2010年度から2014年度にかけて、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のロボット・新機械イノベーションプログラムによる国家プロジェクトの一環として「次世代素材等レーザ加工技術開発プロジェクト」が実施された(研究開発費総額約47億円)。 NEDOのプロジェクトとしては、「フォトン計測・加工技術の研究開発」以来、約10年ぶりとなる当該プロジェクトでは、パワーファイバーレーザ技術の開発において日本の国際競争力の再生を目指す役割を担った。 プロジェクトの目的として、従来加工技術のブレークスルーとしてかつ先進材料の非接触、高品位、高速加工を実現する技術として期待されている次世代レーザ加工技術により、低炭素社会の実現に向けた次世代製品の軽量化・高強度化、高機能化に対応した加工技術の確立が求められた。 また、日本の製造業における国際競争力の維持・強化、技術安全保障などの観点からも、次世代レーザの技術開発に国として取り組む必要性に迫られているとされた。 本事業では、「ユーザーニーズに適応した」かつ「国際競争力のある」半導体レーザ、ファイバーレーザ発振技術およびそれを利用した加工技術の研究開発として、以下の(1)~(3)が実施された。(1)レーザ高出力化技術の開発(2)レーザ高品位化技術の開発(3)多波長複合加工技術の開発181

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