天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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情報の特性と機能方法論の推移と情報技術現在、情報技術(IT)が、あらゆる産業技術や社会事象に対して、極めて大きな影響力、場合によっては支配力、を持つ様相を呈している。ゆえに、情報または情報技術の特性について、多面的に理解を深めておく必要がある。一般に、情報とは、自然環境、人間社会、国際関係、その他の枠組の中での経済活動・生産活動・文化活動などにかかわる事象・事物について、形態・構成・構造、内容・事柄、因果関係、規則性などについて説明し伝達する表象形態であり、記号であって、文字列・数値・数式・画像・音声などで表される。また、情報を取り扱うまたは運用する情報技術および情報機器・システムは、以下の基本機能を有している。すなわち、(1)情報であることを認識する機能、(2)情報を探し、見つけ出す機能、(3)情報を受け入れ、分類し整理する機能、(4)情報を保存・蓄積する機能、(5)情報を分析し、隠れている意味と特性を見つけ出す機能、(6)情報を加工し、新たな意味・特性を創成する機能、(7)情報を発信し、伝達する機能、である。多くの場合、個々の情報技術・システムは、上記機能の一部に特化した機能と用途を有し、他の機能を持つ情報システムと連携して作動し、必要な結果を得ている。上記の機能のすべてを具備し作動できる高度な情報システムは、もしあるとすれば、それは限りなく人工知能(AI)に近いと言える。一方、情報には、上述のように、当該事象・事物に関する重層的事実や複相的関係などが含まれるが、それらは常に明示的に提示されるものではなく、解析や分析を通して明らかになるものも少なくない。すなわち、情報は本質的に多元的・重層的内容を有しており、複雑な関係性を内部に秘めたままで提示される可能性があることを前提として、取り扱う必要がある。つまり、情報は、取得または伝達されたままで利用できるとは限らず、解析・分析・整理・編集・加工などの処理を経て有意となることが多い。よって、情報の有効活用には、解析・分析等の処理能力の有無が大きな問題となる。それらは、通常、数学的・統計的理論や手法等によるので、この面からの学習や応用力強化が必須である。4.金属加工革新の方法論わが国における金属加工の発展を、各時代を代表した製品の変遷として見た結果を(図4)に示す。加工貿易立国を掲げて成長・発展を追求した主要製品の推移に、それらを支えた加工技術の進歩・変革が思い起こされ、感慨深いものがある。図3. 製造技術と情報技術製造技術(Mfg.-Tech.)本質機能=価値の創造創出価値=物財/移動・輸送・通信・公共利便性/産業基盤/社会・生活基盤利得の獲得=グローバル市場、品質/価格/即応性/販売力、Value-Chain戦略 等の競争情報技術(Info.-Tech.)本質機能=価値の発見抽出価値=社会機能/生活利便/産業支援/経済功利促進的情報/知識/データ利得の獲得=サイバー空間での競争、訴求広報力、感性力、Big-Data活用力協創競争図4. 日本の工業製品発展の系譜Industrial products that supported JAPAN in past 60 yearsFabrics,Texture,Clothes, etc.1950〜Ship, Watch,Mobile Radio.Camera, etc. 1960〜ElectricAppliance TV,Ref.VTR, etc.1970〜Steel,Memory,Ind. Machine,LSI Mfg Sys., etc.1980〜Car,Electro. Machi.PC,Degi-Came, etc.1990〜Car,Train,Eco. Machine,Robot, etc.2000〜製造・加工技術の発展には、その時々の工業的ニーズや周辺の技術状況に対応して、様々な視点からのシステム構築論や技術開発論、あるいは、技術革新の戦略論や最適計画論などが提案され、試みられてきた。わが国でも、多くの企業が、それらの方法論を取り入れ、自らも考案し、試行し、具体化しつつ自己変革を推進してきた。(図5)には、実践が試みられた主たる手法や考え方を示す。17

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