天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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(高張力鋼板の接合、異種材接合)また、今日でも主力の接合技術である抵抗溶接は、自動車のボディや列車などステンレス車両のスポット溶接、各種容器のシーム溶接、高周波誘導電縫溶接などの進化を遂げ、さらに溶接状況のインプロセスセンシングをキーテクノロジーとしたロボット化、自動組立、省力化が進み、現在も進化し続けている。5. 1990年代~現在この時代に注目される技術として、ネジ・ボルト・座金の塑性利用の締め付け接合、カムシャフトなどのシェービング接合、摩擦攪拌接合(FSW)、ハイブリッド接合が挙げられる。特に摩擦攪拌接合は、アルミ合金を使用する航空機・自動車・鉄道の各製造産業において実用化され、異種金属の接合および銅など強度材の接合技術として発展した。また、多種多様の接合を組み合わせたハイブリッド接合は、現在も活発に研究が進められている技術である。これら新技術とともに、従来技術の「ろう付」の高度化による液相拡散接合は、ジェットエンジンなどの超耐熱合金の接合技術として不可欠の技術となっている。年代項目1990年~2000年~現在接合技術の傾向各接合技術(特徴、例)変形接合締め付け接合シェービング接合摩擦攪拌接合(Al、Mg、Ti合金、ターボファンエンジン、鉄道車両構造、ロケット推進剤タンク)ハイブリッド接合溶接、その他溶接ロボット表面実装ろう付(液相拡散接合、超耐熱合金の接合)▶1990(平成2)年~現在 [接合技術の変遷]1987年より天田財団が研究助成を行ってきたテーマの中で、接合技術分野の研究テーマは合計67件にのぼり、超音波利用、拡散接合、プラズマ溶射、レーザ接合、圧接、衝撃・爆発圧接、摩擦撹拌、シェービング異種材接合など多種多様な分野に及んでいる。接合技術分野への研究助成6. 今後の展望今後、接合・複合技術で解決すべき課題として次の要素が挙げられる。1.軽量化・高機能化2.高強度化3.コスト低減4.環境対応5.安全性6.信頼性の向上既存技術を活用した解決策の中でも“精密拡散接合技術によるマイクロ部品の開発”が有望である。さらにいまだに存在しない技術として、原子・分子オーダーの接合・複合技術の開発、宇宙・航空機部品の接着剤の創出、新接合・複合技術の開発、医療現場で利用可能な接着剤の創成、生体適合インプラントと生体との接合が望まれる。基礎技術の確立各接合技術の加工機構の解明既技術より未踏技術の開発168研究開発と助成の変遷

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