天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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"モノづくり産業文化"を  大きく育てよう社会基盤を構成する"モノづくり"に占める金属加工の重要性に鑑み、大学・公設研究機関等における同技術にかかわる萌芽研究、基礎研究、応用研究を広範に支援することを目的とし、活発な助成活動を展開して、同分野の発展に大きく貢献してきたのが 公益財団法人 天田財団である。過去30年間にわたる支援実績は、件数で約1,500件、金額20数億円に及んでおり、文字通り、この分野の基盤構築に大きく貢献してきた。全国の大学・高専・公設研究機関等に所属する金属加工分野の教官・研究員・大学院生で、同財団の助成を受けなかった者はほとんどなく、いずれも多大の恩恵を受けてきたと言うことができる。同財団の助成は、広範な視野に立つ適正な審査、研究者の自主性の尊重、その結果としての公正な評価結果に基づいて実施されており、成果は報告書にまとめられ、広く公開されている。同財団の活動は、金属加工技術が体現し推進するわが国の産業振興、加えて、豊かな社会の構築機能の発現としての産業文化の育成、を目指しており、いずれの視点からも極めて意義深く貴重な活動である。今後の"モノづくり産業文化"の発展は、そのままわが国の持続的発展、豊かな社会の構築、に直結することから、同財団の一層の支援を期待したい。3.金属加工を取り巻く情報革命激動する情報環境現状を展望すると、すべての工業分野と同じく、金属加工もまた新たな転換点に直面していることが分かる。コンピュータ技術ならびに情報技術(CIT:Computer Information Technology)の目覚ましい進化と、それらを踏まえての加工設備・機械の知能化、複合機能化と高効率化、製品の高品質化と多様化、加えて、世界規模の生産能力の急激な拡大と市場構造のグローバル化、BRICsをはじめとする新興工業国の目覚ましい台頭など、大小無数の変化・変動が日々押し寄せている。激しい状況変化に対応して、金属加工にも大幅な変革が求められている。 実際、CIC(Computer, Information, Communica- tion)が先導する高度情報化産業社会への転換と軌を一にして、第4次産業革命の到来も叫ばれている状況下にあって、金属加工を取り巻く情報技術環境は激変しつつある。あらゆる局面で知識・情報のネットワーク化とそれらの多元・多面的活用が猛烈な勢いで進行している。他方、価値観やニーズの多様化が、顧客満足度の多様化・複雑化を招き、技術と製品の発展方向を予見し難くしている。加えて、製造物責任や廃棄物低減責任、安全・健康の保証責任、機能・寿命保障責任、その他 産業・企業・技術が負うべき責任(CSR)に対する社会の監視の眼は厳しさを増している。情報技術の革命的ともいうべき進化と拡大が先導するこれらの変動に当面して、金属加工はいかに対処すべきか、難しい対応を迫られている。関連情報をいかにして収集できるか、個々の情報をどのように理解し評価すべきか、判断の基軸をどこに設定すべきか、変動を認めつつも独自的な対応を採るのか、変動に同調して融合的な関係の構築を目指すのか、大きな問題である。目下、多くの企業が、IoTやAIにその活路を見いだそうとしているが、未だ道は遠く、期待される成果も定かではない(図3参照)。図2. "モノづくり産業文化"の認知豊かな社会の持続的発展モノづくり結合・融合協調・補完産業文化 協調的発展の方策価値の発見・創造工業技術 人基盤技術/情報基盤技術技術融合➡革新のEnergy社会的貢献社会的責任理念の高揚視野の拡大高度情報化社会高度工業化社会先へ!の成果が、"モノづくりは産業文化である"とする社会的認知を獲得したのである (図2参照)。16特別寄稿

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