天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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1960年~1970年~回転ダイスダイレス伸線冷間鍛造用鋼線ボラックス被膜メカニカルディスケーリング強制潤滑伸線PCワイヤAvitzurの上界解法すべり線場法現在では圧延素材・伸線技術とも日本が世界をリードしている。3. 1970~1980年代 引抜きに代わるカセットローラーダイス、ロール伸線も難加工材などの特殊用途に普及していった。 引抜きの唯一の弱点であるダイスとの摩擦を軽減させるため強制潤滑伸線も開発されたが、実用化には至らなかった。鋼線では等温パススケジュール、直接冷却伸線、回転ダイス、圧着ローラー、メカニカルディスケーリング、振動酸洗など実用的な技術・機器が普及し始めた。1970年代後半に日本塑性加工学会に伸線技術分科会が発足した。4. 1990年代~現在理論面では従来の上界法、すべり線場法などから有限要素法が発達し、コンピュータシミュレーションが日常的に活用されるようになった。さらにダイス工具の弾性解析を組み入れ、寸法精度向上の解析がされ始めている。太線用ストレート型乾式伸線機、その後の工程の細線用コーン型湿式伸線機が主流となった。橋梁ケーブルワイヤは100年以上前にニューヨークにあるブルックリン橋から始まったが、1998年に明石海峡大橋では世界で初めてφ5mmで1,770 MPaの高強度鋼線が使用された。過共析鋼高炭素鋼鋼線の伸線により、高強度化が急速に進展し、φ0.2mmで実用化強度4.5GPaまで到達する勢いである。湿式伸線はスリップ型伸線機が主流であったが、ダンサーなどの精密張力制御技術を背景に湿式ノンスリップ(独立駆動型)伸線機も開発された。さらに、高度化技術を背景として100μm以下極細線技術の研究と実用化技術、製品開発が注目されている。5. 今後の展望現状の精密圧延材の寸法精度は±0.1mmである。これが将来引抜き代替の要請から±0.05mm以内の精度に向上する可能性がある。したがって、引抜きの寸法精度も±0.01mm以内が求められ、圧延と同様にダイス引抜きの寸法制御技術が求められよう。 タングステンの資源枯渇問題から短期的には超硬合金に代わる工具材質の開発、長期的にはリング摩耗などの欠陥部を自己補修する能力を持ったスマースチールコード2.7GPa151

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