天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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コンテナとビレットが一体化することから、すべりによる摩擦が発生せず、全長にわたって均一に変形が可能な加工法である。一方、押出し加工法の実用化に際しての留意点を次に挙げる。◦押出し方向に直線的な筋が付くことがある。◦コンテナ内にビレットを閉じ込めて加圧する加工法の場合は、ビレットをすべて押出すことができず「デットメタル」として残る。◦製品の内部に「シェブロン・クラック」と称する空洞が発生することがある。2. 1950~1960年代1950年代から始まった高度成長期における民需産業の進展に伴い、アルミ建材や銅合金製品の製造の急成長とともに直接押出し法、間接押出し法の普及が進んだ。東京 八重洲のオフィスビルに国産初の押出しアルミサッシが採用され、その後、規格の標準化がはかられるようになった。1955年にはガラス潤滑押出し法(1941年発明、ユジーンセジュルネ法)が日本に技術導入され、高融点の鉄鋼系材料の加工技術として適用された。また、静水圧押出しは、工具と材料の間に高圧の粘塑性圧力媒体を置くことにより、摩擦低減による発熱防止やメタルフローの均一化が実現できる加工法として研究が進み、1960年代後半から実用機が製作されるようになった。 1960年代は、鉄道車両へのアルミ合金押出し材の利用が進み、1969年には9,500トン押出し機による薄肉で大型のA7003合金、押出し形材の製作が開始された。3. 1970~1980年代 1970年代より静水圧押出し技術の脆性材料、複合材料、粉末材料、難加工材料への適用の研究、工業化が進展したが、当時はサイクルタイムの増大やビレット先端加工が必要な点など短所の克服が課題となった。1971年に英国で開発された連続押出し法のコン フォーム押出し法が1980年代には日本においても実用化された。また、従来は材料を剛完全塑性体としたすべり線場法、上界法などが1980年代の有限要素法解析の実1970年~静水圧押出し技術9,500トン大型アルミ押出し機A7N01合金の開発とアルミ鉄道車両への適用9,500トン押出し機による薄肉で大型のA7003合金押出し形材147

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