天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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(6)押出し技術の変遷▶1950(昭和25)年~1979(昭和54)年 [押出し技術の変遷]▶押出し技術の変遷1. 概要押出し技術とは、素材をコンテナ内に挿入し、金型(ダイス)で圧縮押出しすることにより必要な形状の断面を形成する加工技術である。製造プロセスの利点としては、非常に複雑な断面形状を形成できる、素材にかかる応力が圧縮応力とせん断応力のみのため、もろい素材も成形できるなどが挙げられる。一般に押出し成形が使用される素材としては、金属、重合体、セラミックス、コンクリート、食品があるが、現代ではアルミサッシのようなアルミ製品の加工において多用されている。押出しの歴史は比較的新しく、18世紀に手動ポンプを使用した鉛の銃弾製造が始まりとされ、19世紀には押出しプレス機の開発により、鉛管などの製造が開始された。日本国内においては、第1次世界大戦後に行われた航空機部品のアルミ合金押出しが最初の適用である。現代における押出し技術は、まず高度成長期のアルミ建材や銅合金などの民需産業の分野において発展を遂げ、近年では建築分野のみならずアルミやマグネシウムの素材の比強度の高さを生かした自動車、鉄道車両、航空機など、輸送分野の構造用部材および機能部品への需要が広がっている。材料が再結晶化する温度より高い温度を保って加工硬化を防ぎ、材料が金型を通りやすくする熱間押出が技法として多用される。一般に水平な液圧式プレス機が使用され、数百トンから1万トンの荷重、30MPaから700MPaの圧力がかけられる。また、潤滑剤として、温度が比較的低い場合は油やグラファイト、相対的に温度が高い場合は粉末ガラスおよび固体ガラスが使用される。押出しは大きく分けて、直接押出し法と間接押出し法の2種類に分類できる。直接押出し法は、押出しダイスの進行と製品の押出しの方向が一致している点が特徴であり、量産に向く。問題点としては、コンテナ内壁ビレット外周部の摩擦抵抗によってメタルフローの不均一、温度上昇による結晶粒の粗大化が起きやすいことが挙げられる。間接押出し法は、ホロー状の押出しダイスの進行方向と製品の進行方向が逆になる点が特徴であり、年代項目1950年~1960年~押出し技術ユジーンセジュルネ法の導入国内にガラス潤滑押出し技術の導入鉄道アルミ鉄道車両への押出し材の利用建材東京・八重洲のオフィスビルに初めて押出し形材の国産アルミサッシ採用国内初のレディメードアルミサッシ(標準化アルミサッシ)の開発146研究開発と助成の変遷

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