天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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ドロップの制御が可能となった。熱間圧延のエンドレス化により、世界最速の極薄鋼板タンデムミル技術を達成し、また、冷間圧延の分野においては、世界最速の2,800m/min.を達成した。 切削工具である高速度工具鋼として、ロール材質に適用した「ハイスロール」が熱間仕上げ圧延に適用され、スケジュールフリーやロール耐摩耗性による原単位の向上に貢献した。形・棒線・管圧延:〈H形鋼〉高寸法精度の需要が高まり、水平垂直ロールの油圧圧下制御とAGC方式の採用・サイズフリーガイドが適用された。〈管〉新たな油井管需要の増大に伴い、高合金仕様の継目無鋼管ミルの新設が進んだ。これによりプレスロール穿孔、高交叉角穿孔法、3・4ロールマンドレ ルミルおよび油圧圧下装置導入による管端薄肉化、ストレッチレデューサーなど変形付加特性や制御理論が開発、実用化されている。特に高交叉角穿孔法はマンネスマン穿孔特有のせん断変形の軽減や難加工材および高拡管薄肉穿孔が可能となる画期的な製造法となった。2000年〜現在知能圧延機、加速冷却プロセス冷延PCミル、調質圧延の表面粗度転写技術ハイス6. 2000年~現在板圧延:景気の低迷による研究開発の停滞、知財管理による技術秘匿化傾向大の影響により、研究発表数が激減した時代である。知能圧延機、高剛性20段ミル、調質圧延の表面粗度転写技術、各社における加速冷却プロセス(核沸騰冷却)の開発または実用化が続いた。2008年に着工された東京スカイツリーの建設においては、最大厚100mmの溶接可能な高強度厚板の実現が大きく貢献した。形・棒線・管圧延:〈形鋼〉建設用H形鋼にJISの材質規格が規定されるようになり、この分野においても材質制御・材質造り込み技術が必要となってきた。〈棒線〉精密圧延が一段落し、プロセスから材料開発へのシフトが続いた。〈管〉継ぎ目無鋼管製造の整理統合により、国内鉄鋼会社における製造は1社に集約された。7. 今後の展望計算科学の高度化・高精度化が必要であり、具体的には材質を自在に造り込む材質制御技術の高度化、調質圧延技術の定量化・理論化、矯正技術の高度化などが当面のターゲットと思われる。さらには、スケジュールフリー圧延の技術もまだ完成の域に達しておらず、ソフトの問題かハードの限界かを明確化し、究極的には圧延工場を完全無人化運転にするレベルへの挑戦を行い、将来的にも日本の鉄鋼業の技術的優位性を維持し続けることが望まれる。天田財団がこれまで研究助成を行ってきた研究テーマのうち、圧延技術分野に該当する研究は65件である。研究テーマの傾向としては、高機能圧延、特殊用途圧延、特殊材料圧延などが主体となっており、鉄鋼の圧延技術とはやや分野が異なっているのが特徴である。圧延技術分野への研究助成131

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