天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
124/216

年代項目1990年〜2000年~降伏条件Karallis-Boyce(1993)Barlat(1989、2003、2007)構成式1. 基礎理論Stoughton(2002)2. 繰り返し塑性モデル(バウシンガー効果の表現)Ohno-Wang(1993)Yoshida-Uemori(2002)有限要素法(FEM)結晶塑性理論結晶塑性FEMマルチスケールモデルOhashi(1994)Achrya-Bassani(2000)Gurtin(2002、2008)~▶1990(平成2)年〜現在 [塑性力学理論の変遷]プレス加工限界などに適用が可能であり、板圧延における集合組織の発達予測、およびphase field法の組織形成シミュレーションとあわせて材質予測制御に発展すべく期待される。6. 今後の展望  塑性力学の発展が産業界に最も強いインパクトを与えたのが最近の成形シミュレーション分野である。超高張力鋼板の成形を可能にしたのも材料モデルやFEMの高精度化に裏打ちされたシミュレー ション技術の進歩によるところが大きい。今後は、マルチスケールモデリングをベースとした新材料開発、材料の組織変化(相変態,再結晶など)を伴う熱間成形シミュレーションの高度化などへの応用を考えた理論の一層の発展が期待される。また、成形限界については理論予測がまだ難しいケースも多く残っており、塑性力学の進歩のみならず、破壊力学、材料学なども動員した解明が急がれている。静的陰解法・陽解法(例:Marc、Abaqus、 ASTOM/P-Form)、動的陽解法(例:PAM-STAMP、 LS-DYNA)など分野別にソフトウエアが市販されて いる。また、解析に使用する機材についても、パソコンからワークステーション、さらに最新の並列計算コンピュータへと進化が続いている。有限要素法の定式化・接触探索アルゴリズム・最適化技術を踏まえて、鍛造・押出し・引抜き・圧延・板材成形の解析の実用化へと進展しており、最近では金型の弾性変形や塑性加工機械の弾性変形まで考慮し、精度向上に配慮されるようになっている。以上はマクロ的解析であるが、現在では結晶塑性解析に多くの関心が集まっている。金属材料は、多数の結晶粒から構成されており、マクロ的機械特性は個々の結晶の積算的な効果といえる。古典的な転位論のTaylorモデルがその原点であるが、先駆的な研究は神馬(日、1972)、宮本(日、1972)らの微小変形、後藤(Gotoh、日、1977)らが大変形を考慮した結晶塑性解析を手がけた。現在では、各種結晶格子の回転および加工硬化を考慮し、せん断帯の発生や異方性の発達のシミュレーションが可能になっている。124研究開発と助成の変遷

元のページ  ../index.html#124

このブックを見る