天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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19世紀(塑性力学確立以前)Cauchy(1821)・弾性論発表Navier(1821)・弾性力学の基礎式発表Stokes(1845)・Navier - Stokes方程式発表Saint-Venant(1855)・「Memory on the Torsion of Prisms」出版Maxwell(1856)・せん断弾性ひずみエネルギーと降伏応力の関係を示唆Mohr(1882)・モールの応力円考案Bauschinger(1886)・バウシンガー効果発見塑性力学のあけぼのは、1864年に降伏応力をはじめて定義したトレスカ(Tresca、仏)の論文から始まる。異なった鉛の押出し比の実験において、比率が変化しても最大せん断応力kが一定で塑性変形が進行することを見い出した。1886年にはバウシンガー(Bauschinger、独)が100トンの引張り圧縮試験機を使用し、応力を逆転して圧縮したときの降伏応力は最初の引張降伏応力より低くなる現象、いわゆる「バウシンガー効果」を発見した。モール・クーロンの破壊基準などでも知られる モール(Mohr、独)は技術者としての活躍はもちろん、力学教育にも力を入れ、1882年に「モールの応力円」を考案した。この解法により、せん断、引張破壊時の限界応力を分かりやすく提示し初学者の学びに貢献している。 1913年にはミーゼス(Mises、オーストリア)は論文においてTrescaの降伏条件を修正し、塑性流動における連動を閉じた方程式である「偏差応力の第2不変量から数学的に導いた降伏条件( J2 Flow Theory)」を導出した。その後「ポテンシャル理論」に発展させ、現在の塑性力学の基盤を不動のものとした。を3次元に拡張し、弾性力学の基礎式を示すなど、多くの足跡を残した。 ナビエの協力者であったサン・ブナン(Saint-Venant、仏)は、流体の連動方程式を、剛塑性体へ拡張した。この中で粘性流体としての相似として、せん断応力とせん断ひずみ速度の方向が一致するとした。その弟子であるレヴィ(Levy、仏)は1871年に「偏差応力」と「体積一定を前提としたひずみ速度」が比例するとした「ひずみ増分理論」を提示した。なお、余談ではあるがナビエ、コーシー、サン・ブナン、レヴィの 4人は、1794年に創設され、現在も優秀な人材を輩出しているエコール・ポリテク ニーク(仏)の教授、または卒業生である。少し時代を戻して、1845年には流体力学において著名なストークス(Stokes、アイルランド)により、弾性体を「体積変形」と「ゆがみ(せん断)変形」に分けた基礎式が導出され、金属でも塑性変形が大きくなるとその挙動は粘性流体的であり、固体と粘性流体の明確な境界は決め難いとの卓見が示された。1856年には電磁方程式で有名なマクスウェル(Maxwell、英)により、弾性ひずみエネルギーを「体積ひずみ」と「せん断ひずみ(distortion)」に分け、「せん断弾性ひずみエネルギー」が一定値になると金属は降伏することが示唆された。119

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