天田財団30年史「人を育て、知を拓き、未来を創る ~天田財団30年の軌跡~」
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年代項目17世紀~18世紀理論・事象などHooke(1660)・フックの法則発見Newton(1687)・「プリンピキア」発表Coulomb(1784)・「金属線のねじれと弾性に関する理論的研究および実験」発表(1)塑性力学理論の変遷▶17世紀~19世紀(塑性力学確立以前) [塑性力学理論の変遷]弾性論の始まり塑性学の始まり▶塑性力学理論の変遷1. 概要塑性加工は職人の巧みのワザで成り立ってきた。塑性力学の助けがなくとも古今から多くのプロセス・製品が生み出されてきた。しかし、塑性力学は塑性加工を暗黙知から科学技術に昇華させ、その後の産業の発展に多大な貢献を果たしてきた。塑性力学は、質点系の力学はもちろん、材料力学・弾性力学を基礎として確立された学問である。しかし「材料特性非線形」、「幾何学的非線形」、「境界条件非線形」の非線形三重苦を特徴としている。そのため、計算が複雑で実用化にほど遠い学問であった。さらに若い研究者がインターネットからつまみ食いする知識では全く歯が立たず、これを習得するには並々ならぬ思考力と努力を必要とした。ところが、計算機の進歩により、計算塑性力学による数値シミュレーションが自動車をはじめとした産業全体に必須な道具となってきた。まさに好機到来であり、塑性力学を学ぶインセンティブが高まってきている。 ここでは、塑性力学を学ぶきっかけとなるようにその歴史と、実用的成果であるFEM数値シミュレーションの足跡をたどってみることにした。2. 17~19世紀(塑性力学確立以前) 1660年にフック(Hooke、英)が弾性に関する現在の「フックの法則」を発見し、1687年にはニュートン(Newton、英)が「質点系の力学」を完成させ連続体としての流体の基礎となる「粘性の法則」を提唱した。これらの功績により、その後の塑性力学の道筋が開かれることになる。1784年のクーロン(Coulomb、仏)による金属線ねじり試験に関する論文が発表されている。この試験においては、真鍮や鉄などの金属線のねじり後の回復角度を測定し、ねじり量が一定以下では元に戻れば弾性回復するが、ねじり角が一定以上を超えると元に戻らない塑性が始まり、さらに進行すると加工硬化が生じることを示した。この研究が塑性を定義した始まりとされている。この発表に先立つ1773年にはクーロンは岩石がせん断破壊によって生じることを示し、1781年には「クーロン摩擦の法則」として知られる法則を提示するなど、天性の研究才能を世に示した。19世紀に入ると、1821年には今に名を残すコーシー(Cauchy、仏)が現在のテンソルの概念につながる物体内部に作用する応力の定義や関係式を残している。 また、流体力学において著名なナビエ(Navier、仏)は、固体力学においても1821年にフックの法則118研究開発と助成の変遷

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